医療DX推進体制整備加算は、医療機関のデジタル化を促進するために2024年度の診療報酬改定で新設された加算制度です。しかし2025年4月の改定で6区分に再編され、2025年10月にはマイナ保険証利用率の基準が大幅引き上げ。さらに2026年度(令和8年度)の改定では「電子的診療情報連携体制整備加算」へと名称変更される見込みです。
「うちのクリニックは今どの加算が取れるのか」「届出は必要なのか」——制度が目まぐるしく変わる中で、多くの医療機関が混乱しています。本記事では、2026年4月時点の最新情報に基づき、算定要件・点数・届出方法と今後の変更スケジュールをわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
- 医療DX推進体制整備加算とは(制度の背景)
- 制度変更のスケジュール(時系列整理)
- 現行の加算区分と点数(2025年10月改定後)
- 算定要件(施設基準)の詳細
- 届出の方法
- 令和8年度診療報酬改定の変更点
- 医療機関が今すぐやるべき3つのこと
医療DX推進体制整備加算とは
医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認の活用や電子処方箋の導入など、医療DXに取り組む医療機関を診療報酬で評価する制度です。2024年6月の診療報酬改定で新設され、初診時に加算が算定できます。医療機関が所定の施設基準を満たし、地方厚生局に届け出ることで算定可能になります。
制度の背景:医療DX令和ビジョン2030
この加算は、政府が掲げる「医療DX令和ビジョン2030」に基づいています。以下の3つを柱として医療のデジタル化を推進する国家戦略です。
| 柱 | 内容 |
|---|---|
| ①全国医療情報プラットフォームの創設 | 患者の診療情報を全国の医療機関で共有・閲覧可能に |
| ②電子カルテ情報の標準化 | HL7 FHIR規格に準拠した標準型電子カルテの整備 |
| ③診療報酬改定DX | 診療報酬の算定・請求業務のデジタル化 |
医療DX推進体制整備加算は、このビジョンの実現に向けて医療機関のDX投資を診療報酬でインセンティブ化する仕組みです。
【時系列で整理】制度変更のスケジュール
医療DX推進体制整備加算は短期間で何度も改定されています。まず全体像を押さえましょう。
| 時期 | 変更内容 |
|---|---|
| 2024年6月 | 制度新設。加算1〜3の3区分 |
| 2025年4月 | 加算1〜6の6区分に再編。電子処方箋の導入有無で区分が分岐 |
| 2025年10月 | マイナ保険証利用率の基準を大幅引き上げ |
| 2026年3月 | マイナ保険証利用率の基準をさらに引き上げ |
| 2026年度〜 | 「電子的診療情報連携体制整備加算」に名称変更・再編の見込み |
現行の加算区分と点数(2025年10月改定後)
2025年4月の改定で、電子処方箋の導入済み(加算1〜3)と未導入(加算4〜6)に分かれる6区分体制になりました。
電子処方箋を導入している医療機関
| 区分 | 点数 | マイナ保険証利用率(2025年10月〜) |
|---|---|---|
| 加算1 | 10点 | 60%以上 |
| 加算2 | 8点 | 40%以上〜60%未満 |
| 加算3 | 6点 | 20%以上〜40%未満 |
電子処方箋が未導入の医療機関
| 区分 | 点数 | マイナ保険証利用率(2025年10月〜) |
|---|---|---|
| 加算4 | 8点 | 60%以上 |
| 加算5 | 6点 | 40%以上〜60%未満 |
| 加算6 | 4点 | 20%以上〜40%未満 |
💡 ポイント:電子処方箋導入済みの方が2点高い点数が設定されています。国として電子処方箋の普及を強力に推進する意図が明確です。
2026年3月以降の利用率引き上げ予定
| 区分 | 2025年10月〜 | 2026年3月〜 |
|---|---|---|
| 加算1/4(最上位) | 60%以上 | 70%以上 |
| 加算2/5(中位) | 40%以上 | 50%以上 |
| 加算3/6(下位) | 20%以上 | 30%以上 |
算定要件(施設基準)の詳細
算定するには、以下の施設基準をすべて満たす必要があります。
共通の施設基準
① オンライン資格確認の体制整備
- オンライン資格確認を行う体制を有していること
- マイナ保険証の利用について院内掲示およびウェブサイトへの掲載を行っていること
② オンライン資格確認で取得した情報の活用
- 薬剤情報・特定健診情報・その他必要な診療情報を取得し、診療に活用できる体制を有すること
③ 電子処方箋の体制(加算1〜3の場合)
- 電子処方箋を受け付け、調剤する体制を有すること
- 原則としてすべての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録すること
④ 電子カルテ情報共有サービスへの対応
- 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有すること
- ⚠️ 経過措置期限:2026年5月31日
⑤ マイナ保険証の利用実績
- 前月から起算して直近3ヶ月間の利用率が所定の基準を満たすこと
小児科特例
6歳未満の患者割合が3割以上の医療機関は、マイナ保険証利用率の基準が3ポイント緩和されます。小児ではマイナ保険証の利用率が低い傾向があるため設けられた特例措置です。
届出の方法
届出が必要なケース
- 新規に算定を開始する場合 → 地方厚生局への届出が必要
- 電子処方箋を新たに導入し区分が変わる場合 → 新様式での届出が必要
- 電子処方箋未導入のまま加算4〜6を算定する場合 → 再届出は不要(既届出済みの場合)
届出の流れ
施設基準の充足確認
マイナ保険証利用率・電子処方箋・オンライン資格確認の体制を確認
届出書類の作成
厚生労働省が定める所定の様式を使用
地方厚生局へ提出
毎月届出可能。届出した翌月1日から算定開始
院内掲示の実施
院内およびウェブサイトにマイナ保険証利用に関する掲示を掲載
⚠️ 令和8年度改定(2026年度)の届出に注意
2026年6月1日から算定するには5月7日〜6月1日までに届出が必要です。制度移行に伴いすべての医療機関で新たな届出が必要になる可能性が高いため、早めの準備が推奨されます。
【2026年度】令和8年度診療報酬改定の変更点
2026年度の診療報酬改定では、現行の「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」が廃止され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられます。
| 項目 | 現行(〜2026年5月) | 令和8年度改定(2026年6月〜) |
|---|---|---|
| 名称 | 医療DX推進体制整備加算 | 電子的診療情報連携体制整備加算 |
| 区分数 | 6区分 | 3区分(加算1〜3) |
| 最高点数 | 10点 | 15点 |
| 評価の軸 | 体制の「整備」 | 利用の「実績」 |
| 電子カルテ情報共有 | 経過措置あり | 必須化 |
⚠️ 最大のポイント
評価の軸が「体制の整備」から「実績」にシフトします。DXの仕組みを導入しているだけでは不十分で、実際にマイナ保険証や電子カルテ情報共有サービスを活用している実績が問われます。また、電子カルテ情報共有サービスの経過措置は2026年5月31日で終了します。
医療機関が今すぐやるべき3つのこと
マイナ保険証の利用率を確認・向上させる
利用率は加算区分に直結します。医療機関等向け総合ポータルサイトで現在の利用率を確認しましょう。
- 受付でのマイナ保険証利用の声かけ
- 院内ポスター・待合室モニターでの案内
- カードリーダーの増設・操作サポート整備
電子処方箋の導入を検討する
導入有無で加算点数に2点の差があります。1日50人の初診患者がいるクリニックの場合、年間で約36万円の収益差になります。補助金制度も活用できるため、レセコンベンダーに確認を。
電子カルテ情報共有サービスへの対応を急ぐ
経過措置期限は2026年5月31日。対応が遅れると2026年6月以降の加算算定ができなくなるリスクがあります。まず現在使用しているシステムのベンダーに対応状況を確認しましょう。
まとめ
医療DX推進体制整備加算は、2024年の新設から2年余りで何度も改定され、2026年度には「電子的診療情報連携体制整備加算」へと再編される見込みです。加算の算定要件に振り回されるのではなく、医療DXの全体像を理解した上で計画的に取り組むことが、長期的な経営安定につながります。
📌 今後の対応チェックリスト
- ✅ 医療機関等向け総合ポータルサイトでマイナ保険証利用率を確認した
- ✅ 電子処方箋の導入可否をレセコンベンダーに確認した
- ✅ 電子カルテ情報共有サービスの対応状況をベンダーに確認した(期限:2026年5月31日)
- ✅ 2026年6月1日からの算定に向けて5月7日〜6月1日の届出期間を把握した
よくある質問
Q. 医療DX推進体制整備加算は月に何回算定できますか?
患者1人につき月1回、初診時に算定できます。再診では算定できません。なお歯科の場合は初診料に加えて再診料での算定も可能な場合がありますので、最新の告示をご確認ください。
Q. 薬局でも算定できますか?
はい、算定できます。薬局の場合は調剤基本料に加算する形で算定します。算定要件は医科と基本的に同じですが、電子処方箋の導入と調剤結果の登録が特に重要な要件となります。
Q. 電子処方箋を導入していなくても加算は取れますか?
はい、取れます。ただし電子処方箋未導入の場合は加算4〜6の適用となり、導入済みより点数が2点低くなります。2026年度以降は要件がさらに厳しくなる可能性があるため、早期の導入検討をおすすめします。
Q. 2026年度の「電子的診療情報連携体制整備加算」への切り替えはどうすればよいですか?
名称・区分が変更された場合、新たな届出が必要になる見込みです。2026年6月1日から算定するには5月7日〜6月1日の届出期間内に手続きを完了する必要があります。改定の詳細は2026年3月頃に厚生労働省から正式に告示される予定ですので、最新情報を注視してください。

